乾くるみ著 『イニシエーション・ラブ』

松本伸夫

2014年08月10日 17:09



先般の『てふてふ荘…』の作者と乾(いぬい)つながり

図書館で隣り合わせに並んでいたのが縁で知った作家です

文庫版のカバーの裏表紙には

「決して、先に最後の2行を読んではいけません」

「必ず読み返したくなる極上のミステリー」


これは楽しみ!


男子一名がドタキャンしたため

数合わせに呼ばれた初合コンでまさかの一目惚れ

静大4年生にして彼女いない歴うん十年の初心な彼氏が

歯科衛生士で2歳年下の初心な彼女の

何気ないリードでデートにこぎつけ

初体験を経て

クリスマス・イブには高級レストランでの食事&ホテル泊

人生最高の夜を迎える


というのが前半戦(Side A)


彼女には忘れられない忌まわしい記憶が…

ってこともなく

スイート・ルームのドアを開けると見知らぬ女性の死体が…

ってこともなく

事件はおろか、事故さえも起こらず

つまりは単なる純愛小説で、ミステリーの欠片もありません

まあ、それならそれでいいでしょう

青春全開的恋愛小説も嫌いじゃないし

後半戦の展開に期待しましょう


後半戦(Side B)で彼は就職

地元静岡で入社した会社で認められ

東京本社に2年間の研修に赴くことに

後ろ髪を引かれながらも会社命令では断る術もなく

アパートを引き払って東京に旅立つ彼

離れていても心が通じ合っていれば大丈夫と

気丈に後押しする彼女

二人の遠距離恋愛は

毎週末に愛車を駆って静岡に通う彼の努力で続いていきますが

そんな無理が祟って次第に綻び始めていく

というお定まりのパターンに

同僚の美人との浮気

思いがけない彼女の妊娠

出産は有り得ないと思うものの悩む彼

そこに放たれた浮気相手の言葉

「イニシエーション・ラブ」

が引き金となって彼女に堕胎を迫り、一気に破局へ



純愛の物語が失恋の物語にはなりましたが

やっぱりミステリーの香りは漂ってこないなぁ…と思いつつ

最後の2行で吃驚仰天!!

あれ?あれ??あれ???

裏表紙の予告どおり読み返す羽目になりました

で、Side AとSide Bの時系列を整理し直して

「あれはそういうことだったのか!」

「これはここにつながっていたのか!」


と納得してたどり着いた結論に改めて愕然としました

「じゃあ、彼女って…」

…を書いたらお終いですから書きません

どんな感想を述べてもネタバレになってしまいますから言いません


ちなみにSide A、Side Bともに

各章の表題には

『揺れるまなざし』
『愛のメモリー』
『ルビーの指輪』

など、当時流行っていた懐かしい曲のタイトルがつけられています

2度目を読み終えた私の頭には、あみんの『待つわ』が流れていました


P.S.

「イニシエーション(initiation)」を辞書で引いてみると

①開始
②入門
③入会式
④手ほどき

などとあります

文中では『通過儀礼』と約され

『イニシエーション・ラブ』は

「それを乗り越えることで自分が成長するための糧となる恋愛」

という意味の、浮気相手が作った造語です。

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